祝生誕、江戸川乱歩傑作選特集 ~香椎さん編~

 こんにちは。

 10月ももう半ばだというじゃないですか。

 時候の挨拶もままならないくらいに早い月日、おそろしいですね。

 それはさておき、今回はタイトルの通り、香椎さんに全面的にお任せしまして、あの作家の特集でございます。

 ポラン堂古書店において異彩を放ちつつも、存在感のある特集棚がございますが、こちらも香椎さんプロデュース。先生(ポラン堂店主)からも、引き寄せられるお客さまが多くいらっしゃるとよくお話を聞きます。

 勝手な前口上をしていても仕方ありません。

 (綺麗に締まっているので後ろ口上も今回は致しません。)

 香椎さん、どうぞです。




 10月21日は志賀直哉の命日「直哉忌」です。ということで今回は志賀直哉の…といきたいところですが、10月21日は江戸川乱歩の誕生日!今回は乱歩回でございます!

 今まで一人で細々と祝ってきましたが、今年は発言の場をいただけて感無量でございます。


 ということで今回は、世の中に数ある江戸川乱歩文庫・江戸川乱歩傑作選の中から、「装丁編」「内容編」と3つずつおすすめを紹介していきたいと思います。

また選出するにあたって、現在新刊書店・古本屋で手に取りやすいものから選んでいます。少し古いもので良い本もあるかと思いますが、ご容赦いただけますと幸いです。(全集は対象外にしています)




◉装丁編

春葉堂書店「江戸川乱歩文庫」

 乱歩文庫の装丁といえば!なシリーズです。全体的に不気味で眺めているだけでテンションが上がります(個人の感想です)。装丁画は、銅版画家の多賀新です。

 1987年に初めて刊行され、その後2015年(乱歩の没後50年目)にリニューアル版が刊行されています。87年のものは文字が小さくて非常に味があります。それほど古くないのに、雰囲気のせいか古本読んでいる感が味わえるのが堪りません。

 リニューアル版は、文字が大きくなって読みやすくなっています。新刊書店に置いてあるのはほぼこちらです。収録内容も非常に良いので、見かけた際はお手にとってみてください。




講談社「江戸川乱歩推理文庫」

 黄色の装丁が目印で、ブックオフに一番置いてあるシリーズだと思っています。表紙絵はファイナルファンタジーシリーズでお馴染みの天野喜孝氏。シリーズの中でも少年探偵シリーズがよく置いてあるイメージなのですが、二十面相が変装する怪人たちがこんなに美麗な怪紳士なら…とよく夢想しています。




角川ホラー文庫「江戸川乱歩ベストセレクション」

 現在は和紙っぽい質感の和柄のものが置いてあることが多いですが、それ以前の田島昭宇氏のイラストのものが美しいです。

 初めて見ると手に取るのを躊躇うくらい怪しいのですが、丸尾末広が昭和の耽美だとしたら、こちらは平成後期に生まれた昭和の匂いがする耽美といった感じで、時代感がありつつも乱歩っぽいのが良いです。

 『陰獣』だけ手元にあるのですが、この背中、何時間でも見ていられます。





◉内容編

文春文庫「江戸川乱歩傑作選」鏡・獣・蟲

 以前本ブログでも紹介した傑作選です。湊かなえ・桜庭一樹、辻村深月がそれぞれ一冊ずつ選出しています。作家が選者ということもあり、他とは違う収録内容なのが魅力です。

 「鏡」は推理小説中心、「獣」は幅広くオールジャンルで、「蟲」はとにかくドロドロネチネチエログロナンセンスな選出です。「獣」は初心者に読んでほしい、「蟲」は人を選ぶので、読む際は覚悟していただきたいです。

 「獣」が推理も怪奇幻想も兼ね備えているので、「獣」を読んで面白かった方を「鏡」と「蟲」で深掘りしていただくと良いかもしれません。

 「鏡」は以前紹介記事を書いているので、よろしければ読んでいただきたいです。二冊についても機会がありましたらぜひ。




角川ホラー文庫「江戸川乱歩ベストセレクション」

 『パノラマ島奇譚』『人間椅子』等全部で8冊出版されています。装丁でも紹介したシリーズです。

 乱歩ってホラーもあるの?と思われたかもしれませんが、厳密にはホラーではありません。「読むと眠れなくなる作品を集めました」という鬼畜仕様です。最後が衝撃的でええっ!と動揺して終わったり、息を飲んで最後を見届けたりする作品が多いので、休日の前夜に読んで眠れない夜を過ごしていただきたいです。




新潮文庫「江戸川乱歩傑作選」

 やはりこちらは外せません。もはや殿堂入り、トップオブトップな気持ちでおりますが、傑作選とはまさにといった一冊です。処女作『二銭銅貨』から始まり、『二癈人』『D坂の殺人事件』『赤い部屋』『鏡地獄』『芋虫』等、乱歩作品の濃いところだけ濃縮した煮凝りといっても過言ではないくらいです。

 短編集なので、一作品読むのも一冊すべて読むのも大した時間がかからないはずなのに、一作一作が凄まじくて一気読みなどできないレベルです。

 もちろんどこから読んでも非常におもしろいので、お見かけした際にはぜひお手にとってみてください。





 いかがでしたでしょうか。文豪の作品って各出版社でたくさん刊行されているので、どれから手をつけていいか迷っている方の参考になれば幸いです。そして改めて、

 乱歩先生!お誕生日おめでとうございます!!

 今回もありがとうございました。


ポラン堂古書店サポーター日誌

2022.4月に開店した夙川の古本屋さん 「ポラン堂古書店」を応援するために、 ひとりでに盛り上がってできたブログです。 ・ポラン堂古書店のおすすめ情報 ・ポラン堂古書店、 およびその店主が関わるイベントなどのレポート ・店主や仲間たちを巻き込む、読書好きの企画記事 ……などなどを毎週日・水ほか、で更新予定。 ちなみに店主とブログ主の関係は大学時代の先生と生徒なのでたびたび「先生」と呼びます。

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