2024年版ブックサンタ応援☆おすすめ本紹介①

 こんにちは。

 お久しぶりの方、お久しぶりです。

 現在不定期更新となっております、夙川駅直結・ポラン堂古書店を勝手に応援するサポーターたちによる本やら何やらを紹介するブログでございます。年の瀬です。

 実は昨年もさせていただいたのですが、サポーターズの一人、はねずあかねさんの熱い気持ちに動かされ、今年も「ブックサンタ応援企画」を開催いたします。


 まずブックサンタとは、ですが、

『ブックサンタ』は、NPO法人チャリティーサンタが全国の様々な困難によって体験格差を抱える子ども達に本を贈るため2017年に書店と連携してスタートした社会貢献プロジェクトです。
本を贈りたいと思った人が本を買うと、チャリティーサンタをはじめとした全国数百のNPOを通じて、子ども達へ本のプレゼントが届きます。

 というのが、公式HPからの引用です。(昨年と少し変わっている、と驚きましたが、企画そのものは変わっておりません。)


 要約すると、「ブックサンタ」の参加書店に行って、レジで本を買って、その場で寄付をして帰れば、その本は、ボランティアさんの手によって本がほしい子どもたちに届けられるという、素敵企画というわけです。

URL) https://booksanta.charity-santa.com/about/


 というわけで、こちらのブログがやりたいことはただ一つ、おすすめ本の紹介です。

 ブックサンタの企画におすすめな本、もしくはブックサンタの企画に限らず、小学生や未就学のお子さまたちにおすすめな本をにこにこと考えてみましたので、お時間があればご一読いただければです。


 今回、ポラン堂古書店サポーターズから四人、記事を書いてみました。

 二日に分けて、二人ずつ参りたいと思います。

 今回は、香椎さんとはねずあかねさんです。それではどうぞです。


 ※ポラン堂古書店はブックサンタの参加書店ではありません。対象書店は公式HPを確認ください。ただ、本を選びたい、まずどれか考える為に読んでみたいということであればポラン堂古書店も、ポラン堂古書店の我らが先生(=店主)も、きっと力になってくれます。ですので、ポラン堂古書店にもぜひお越しいただければです。



スターリング・ノース『はるかなるわがラスカル』 ~香椎さん~

 幼いころ、「ともだち」がいたことはありますか。

 人間の友達ももちろんですが、ぬぐいぐるみやおもちゃ、『トイストーリー』のウッディやバズのような「ともだち」がいた方も多いと思います。

 今回は僭越ながら、私の「ともだち」の話をします。


 スターリング・ノースの「はるかなるわがラスカル」は、1970、80年代に一世を風靡した(と聞いている)テレビアニメ「あらいぐまラスカル」の原作です。


 スターリングは、アライグマの赤ん坊を拾い、「ラスカル」と名付けて幼少期を共に過ごします。著者スターリング・ノースの実話ではありますが、物語調で綴られ、アメリカの田舎暮らしが鮮明に描かれていることも魅力的な作品です。


 10歳ころの私は既にインドアで、CS放送が親友でした。中でもアニメ専門チャンネルを見漁って、そこで出会ったのが「あらいぐまラスカル」です。

 それから祖父母の家でラスカルのぬいぐるみと出会い、今でも側にいてくれる、十数年来のともだちになりました。


 ラスカルは犬でもクマでもなくて、指が五本ある手がしっかりしていて、何も考えていないようなとぼけた顔をする時もあれば、目がキラキラと独特の愛嬌があって、私の可愛いの基準になりました。


 小学生の頃はいつどこに行くにも一緒のともだち。

 受験期の鬱々した時代を支えてくれたともだち。

 職場の不満をさらけ出しても慰めてくれるともだち。

 独りよがりではありますが、何にも代えられない大きな存在です。


 にもかかわらず、原作を全く読まずに十数年もラスカルと過ごしてしまいました。そして先日、ようやく原作を手に取りました。あの可愛いラスカルが本当に存在していた事実に天を仰ぎました。


 まず、主な描写はアニメ「あらいぐまラスカル」と同じで驚きました。

 ザリガニを捕る仕草、角砂糖の話、カラスのポーとの対立。記憶に鮮明に残っているお話が実話であることに涙せずにはいられません。

 (ちなみに「ポー」の由来は「エドガー・アラン・ポー」でした。一番のおどろきです。)


 アニメで描かれていなかったのは、主に時代背景に関する内容でした。

 舞台は1918年、第一次世界大戦中で、スターリング自身は直接戦争に巻き込まれていないものの、兄が前線で戦っていて、身を案ずる描写が多く登場します。

 休戦になって町が賑わっていたり、当時の戦争詩を口ずさんでいたり、スターリング・ノースの思想や暮らしぶりがよく描かれていました。


 ラスカルの辛いところもアニメと同じで、トウモロコシの味を覚えたラスカルは、近所から駆除するよう責められ、最後には森へ帰してしまいます。

 世界でも害獣として認識されているアライグマですが、同時期に日本にも持ち込まれ、野生に放たれたアライグマは、農家を脅かす存在になっています。


 世の中に動物との友情を描いた物語は数多くあれど、これほど困難な関係を描いた作品はそう多くはないのではと思います。

 愛嬌のある動物だからこそ、身に染みるものがあるのだろうと思います。特に原作では、その壁に葛藤する様子が強く表れています。


 私は今でも、「うちのラスカル動かないか」と思うことがありますが、この葛藤と向き合うのがラスカルとの付き合い方であり、間接的に動物と責任を持って付き合うことを無意識に考えさせられているのだろうな、と感じます。


 真面目な話になりましたが、最後に

 かみさま、ありがとう。わたしのともだちラスカルに会わせてくれて!



ダイアナ・コールス『アリーテ姫の冒険』 ~はねずあかねさん~

 ポラン堂古書店には私の棚が存在するわけですが、棚に入れられている全てを私が読めているわけではありません。見栄えの問題もあり、すかすかになる前に私が好きそうな本を先生が入れてくださっています。


 そんな私の棚ですが、先生の選ぶ本だけあって色々と私の関心を引く本が並んでいるのです。(ちなみに、「ぶたのたね」や夏に出てくる「おっきょちゃんとかっぱ」などは本当に私が既に読んでいておすすめしたい本です。)私の棚で一際目を引いていたのが「アリーテ姫の冒険」でした。やはり、どうにもこうにも、こういった児童文学が好きだという気持ちがありますね。


 装丁は赤をメインに、馬に乗ったアリーテ姫の勇ましい姿が描かれた表紙がとても印象的な本です。


 この物語が書かれたのは1980年のことだそうです。まだ、女性はかわいらしく従順で、といった価値観の頃。作者は、そんな時代に強い女性を描きたいと思い、この物語を書いたそうです。


 アリーテ姫は3つだけ願いを叶えてくれる指輪を物語の途中で手に入れるのですが、その願いは全て自身の生活を豊かにするために使われます。良くない魔法使いと結婚することになってしまったので、その魔法使いから難問をつきつけられるのですが、その難問には使わなかったし、使う必要もなかった。彼女は指輪の力を使わずとも、どうすれば難問を切り抜けられるのかきちんと考えられるし、知識もある人でした。賢いとはこのこと。


 最後は難問を解決することで得たものを使って、世界中の困っている人を助けるという目的で旅立つところで終わります。


 童話のようにさらりと読めるので、読める子なら小学校低学年ぐらいの子でも読めそうです。アリーテ姫が魔法使いから頼まれる難問を解決していく様もなかなか爽快な感じですし、閉じ込められた部屋で楽しく過ごしている様子も読んでいてわくわくします。あと何かとごはんがおいしそう。海外文学の食べ物のおいしそうな様子ってなんだか不思議ですよね。


 今は色々な強い女性が描かれる時代となりましたが、元祖としてこの作品を読んでみるのも良いのではないでしょうか?



 香椎さん、はねずあかねさん、ありがとうございました。

 意図せずでしたが、海外の作品をおすすめするかたちになりました。

 物語性だけではなく、新しい価値観や知識、そんな難しいものではなくても新しい可愛さ、かっこよさに出会えるだけで、宝物のような体験になるのではと思います。

 次回は一児の母でもある桜澤美雅さんと、わたくしあひるで、これもまた偶然、日本の作品をご紹介いたします。お時間があればぜひ。

 それでは。

ポラン堂古書店サポーター日誌

2022.4月に開店した夙川の古本屋さん 「ポラン堂古書店」を応援するために、 ひとりでに盛り上がってできたブログです。 ・ポラン堂古書店のおすすめ情報 ・ポラン堂古書店、 およびその店主が関わるイベントなどのレポート ・店主や仲間たちを巻き込む、読書好きの企画記事 ……などなどを毎週日・水ほか、で更新予定。 ちなみに店主とブログ主の関係は大学時代の先生と生徒なのでたびたび「先生」と呼びます。

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