私の棚、の紹介
昨日、ポラン堂古書店に新たな本棚(カラックス)が届きましたので、本日の定休日は、その棚づくりが行われたのでした。あんなコーナーをつくりたい、どういうジャンルで分けたいという意見出しに始まり、配置ごとの本集め、飾りつけまで楽しいことばかりお手伝いをさせていただきました。
明日はリニューアルオープンと言ってもいいでしょう。素敵な棚を皆様にもご覧いただきたいのですが、今日はこのブログにてその棚の一つを紹介させていただきたい所存です。
もう一つ、前置きの話があります。
オープンよりだいぶ以前、まだ一人ずつサポーターたちに声がかかっていたような時期でした。先生は「ゆくゆくはみんなのおすすめ本のコーナーを作ってほしい」と仰いました。さらには「置いてほしい本があればリクエストしてほしい」とも。私たちは(特に私は)、あれもこれもと思いを巡らせ、先生にお伝えし、先生はオープンまでにそういった本も集めてくださっていたのでした。
ということで、念願の「私の棚」を紹介します。
たくさんの方に読んでほしい、私にとってきらきらの本たちです。
写真の上に「いだてん」が見切れているのがとてもいいですね。
ぜひ、全体を見てほしいのですが、私の、夢の、小さな本屋をお話ししますね。
この冊数だけでもすべての紹介はきりがなくなってしまうので2つだけ……。
●「長嶋有」作品
『ルーティーンズ』の帯の通りデビュー20周年の長嶋有先生。私の読書熱の深いのところを占めている一番好きな小説家さんです。
最新作『ルーティーンズ』は2020年4月、コロナによって変わってしまった日々の生活を、いろいろ考えつつ、工夫しつつ送る夫婦のお話(と、他1編)。あの頃の緊急事態宣言への緊張感とか、景色が変わってしまう感じなど、もはや懐かしい気持ちになってしまいます。そういった共感の連続は、長嶋有作品の入口としてもいいのでは、という思いと、あと単純に映えるなという戦略で、ドセンターにさせていただきました。手帳のようなサイズと色の装丁や、藤井隆さんのコメントも最高なんですよね。
長嶋有さんをまだ読んでいない方は、一文目から、疑いようもなく生きているなと思わせる登場人物たちの自然さに驚いてほしい。あまりに生きているな、と思ってしまうと、ちょっとしたことで泣けてしまうんです。人がみな、例外なく、ちゃんと一人であることを芯からわかっている人だから、こういった文章を書けるのだと思います。
いずれお話しする機会もあるかとは思うのですが、オールタイムベスト『問いのない答え』なんて初読みで5回くらい泣いて、今でも読み返すたびに愛しさで胸がいっぱいになります。『愛のようだ』は単行本時の表紙が好きで、先生に無理を言って揃えてもらいました。実はアニソンとドライブの恋愛小説で、特に一章の終わり方が震えるほど好きです。
●「いくえみ綾」作品
学生だった私が初めて、作家さん単位で作品集めに奔走するくらい好きになった漫画家さんです。当時、好きな作家は? と聞かれたら真っ先に答えた名前であったはず。それくらい長い付き合いで、しかしまだまだ、新作も続刊も楽しみで仕方がないんだから凄まじいです。
いくえみ作品の説明できない文学性に、当時まだろくに言葉も知らない私は戸惑い、たまらない「好き」を持て余していたのでした。短編たち、「いちごの生活」の主人公いちごのモノローグに、ラブレターに言葉としてのみ登場する「レモン色の壁」に、「ブローチ」の猫のモチーフに、その全てに震えるほどの文学的行間があることを、当時は言葉にして誰かに伝えることなど到底かなわなかった。やっとこうしておすすめできることがうれしくって堪りません。『いくえみ綾 読み切り傑作選』には大名作が詰まっております。
さらに『トーチソング・エコロジー』。こちら3冊セット売りになっています(お値段はぜひ店頭にて)。何故この作品があらゆる賞を総なめにしていないのか、メディアミックスがないのかわからない、どこにだって勧めたいいくえみ作品の傑作です。
日付も変わってしまいましたので(また木曜日更新です……)、今日はこのあたりで。
いずれ「私の棚紹介2」か、単純に吉田篤弘を語りたい回をつくったり、西加奈子氏の『舞台』だけの記事をつくるかで、同じようにまた熱を放出したいと思います。
またサポーター勢はローテーションで棚を回していきたいつもりなので、私の棚ばかり売りたい気持ちではないことを誤解ないうちに伝えていきたいです。他のサポーターの棚も撮影しましたし、他の魅力的な棚もたくさんありますので、また「棚紹介のコーナー」をちょくちょくしていきたいと思います。
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