ダリの繭 ~あさぎさん編~

 こんにちは。

 今回は、ポラン堂古書店に新しくできた棚の紹介になります。

 「火村英生シリーズとミステリ+ちょっぴりホラー入門棚」というコンセプトでございます。椅子と砂時計が良い味を出していますね。毎度のごとくですが、この中で私が読んだことがあるのは後ろにある一冊くらいでして。『dele』はドラマで観ました。むちゃ良かった。

 そんな読書量の私が棚紹介をするのにも限界があるだろうということで、今回は、我々ポラン堂古書店サポーターズの中でも屈指のプレゼン力を誇る、あさぎさんにバトンを引き継ぎまして、私も個人的に気になっている(気になっていながら全くの未読である)、有栖川有栖さんの火村英生シリーズを紹介してもらおうと思います。

 それではどうぞです。


有栖川有栖『火村英生シリーズ』

 ドラマ化された作品なので名前はご存知の方も多いかもしれません。

 火村英生シリーズはミステリ初心者向けの作品かと思います。でもだからといって事件やトリックが単純というわけではありませんのでご安心ください。

 この作品をざっくりと説明しますと犯罪社会学者で大学の准教授である火村英生と推理小説家の有栖川有栖の2人が事件の謎を紐解いていく、いわゆるホームズとワトソンのバディモノです。


 しかし、ただのバディモノというわけではなく、この作品の最大の魅力は描写。

 ホームズ役である火村英生、ワトソン役のアリス(作中では漢字表記の有栖ではなくカタカナ表記)、登場する京都府警の面々など登場人物や舞台の描写がとても丁寧な為、いつの間にか作品の世界にどっぷり浸かってしまう。事件やトリックについて考えながら読むというよりも、スルッと自分の内側に入ってくる、そんな作品です。

 火村英生シリーズの作中の舞台はほとんどが関西。作者である有栖川先生は大阪出身の為、とても細かく情景描写されているので、関西に縁がある方であれば情景が頭に浮かぶでしょう。

 又、登場人物の心情の描き方がとても繊細で、キャラクターというよりも実在の人物かのように息づいています。登場人物ひとりひとりの不器用な生き様を思わず愛してしまうような、丸ごと愛したくなる魅力的な奴らばかり。犯人でも完全な悪人と言い切りたくないな、と個人的に思ってしまいます。


 まずは最初の作品である『46番目の密室』について少しだけ。

 火村とアリスの初めての事件を描いた作品であり、火村とアリスが今のバディ関係になった事件でもあります。

 個人的にシリーズの中でベスト5に入る作品と言っても過言ではない。

 ミステリの定番である密室トリックのお話なのですが、ありきたりになりすぎず、読み応えのある作品です。

 火村英生シリーズ読んでみようかなーと思われたら是非こちらから読んで欲しい。

 ただ、火村英生シリーズは作品数が多く、又様々な出版社より発行されている為、正直なところを申し上げるとそこまで順番にこだわる必要はないと思っています。どこから読んでもわかるような作りなので。

 角川ビーンズ文庫ではほぼ順番通り(一部長編などは未出版)で出版されているのでまとめて順番に読みたい方はそちらで読み進めると楽です。又、角川ビーンズ文庫では有栖川有栖先生が自らテーマごとにまとめてくださった『研究シリーズ』が出版されていますので、ご興味のある方はそちらも是非。

 コミカライズもされておりますので、まず雰囲気だけ味わいたい方はそちらも良いかと。

 シリーズモノではあるあるですが、作中で他の作品の内容に触れることもあるので、ネタバレを気にする方は順番通りの方が良いかもしれません。そこまで大きなネタバレはなく、さらっと触れるだけなので、あんまり気にしない方に関しては気になったタイトルや短篇集から読むのも良いと思います。

 

 どの作品も推すべきポイントがあるので、1番好きなものは?と聞かれると数日迷ってしまうのですが、何度も読み返しているのは『ダリの繭』です。

 本作では神戸が舞台で、タイトルにもある通りサルバドール・ダリの心酔者ある宝石チェーンの社長が殺害された事件のお話。

 あちこちに散らばる火村とアリスの微笑ましいシーンや明かされるアリスの過去がなんとも切なく、愛おしいです。とにかく読んで欲しい。

 他の作品についても熱く語りたいのですが、それはまたの機会にでも。

 普通シリーズモノであれば最後はどうなるの?と思うことがほとんどだと思いますが、火村英生シリーズに関しては終わってしまうのが想像できない、生きている人物の生涯を覗き見している気持ちで見守ってしまいます。

 最新作では今の日本の生活様式にも触れており、彼らは今日もこの日本で生きている、そう思ってしまう、そんな大好きな作品です。

 もうすぐ私は火村たちの年齢にあと数年で追いつきます。

 彼らの年齢を追い越しても私はまだ彼らの物語を見守りたい、永遠の34歳である2人に何度でも出会いたい、そう思うのでした。


 再びブログ主のあひるに戻ります。あさぎさん、ありがとうございました。

 確かに、読書にまだ慣れていなかったり、まだ楽しさがわからないなって方に勧めるとしたらミステリはうってつけだと思います。なんてたって、読まないとわからないことがあるのです。読み進めなければ気になって仕方がない。さらに、火村英生シリーズには愛すべきキャラクター性存分にもある模様。はまってみたいという方、ぜひぜひポラン堂古書店の棚から手に取ってみてはいかがでしょうか。わたしも読まねば。

ポラン堂古書店サポーター日誌

2022.4月に開店した夙川の古本屋さん 「ポラン堂古書店」を応援するために、 ひとりでに盛り上がってできたブログです。 ・ポラン堂古書店のおすすめ情報 ・ポラン堂古書店、 およびその店主が関わるイベントなどのレポート ・店主や仲間たちを巻き込む、読書好きの企画記事 ……などなどを毎週日・水ほか、で更新予定。 ちなみに店主とブログ主の関係は大学時代の先生と生徒なのでたびたび「先生」と呼びます。

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