2024年の本ベスト10冊☆
こんばんは~!
大晦日でございますね。紛れもなく今年最後のブログ更新です。
私事ですが、というより今回は私事しか終始話しませんが、
毎年、今年のベスト本みたいなものをX(旧ツイッター)のハッシュタグに乗っかってポスト(旧ツイート)していたのですが、今年はもう、言ってしまいますと、30冊しか読んでおりません。それもこれも日本のプロバスケットボールの世界、Bリーグ(旧bjリーグ・NBL)にかまけ続けたせいでございます。一か月1冊、読まない月もあったくらいで、仮にもポラン堂古書店のサポーターズブログをやっている、読書アカウントの方にもフォローいただいているアカウントが、わずか30冊の中から「ベスト10冊☆」なんて大それたことを呟けるものだろうか、否……と、悩みもがきながらも年末に辿り着きました。
そしてふと今年読んだラインナップを見てみたわけです。
思いました。……濃いなぁ~。と。
今年は10冊選びませんとか、さらっとスルーしちゃうような面々ではないんです。面白かったし、驚いたし、感動させられた。この本たちに感謝をこめてなんかしたい。
で、ポラン堂さん応援ブログを私物化してうだうだこうして書くことにしました。
というのが前置きで、結構迷ったトップ10ですが、このブログらしく1位から3冊楽しくご紹介しまして、あとは最後に10冊載せたいと思います。今年はこんな感じでいきます。
お暇な方、っていうのもこんな年の瀬にいらっしゃらないと思うので、年始あけてふと時間があいたなぁという方など、どうぞお付き合いくださいませ。
ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』
どんな個性的なランキングが来るかと期待された方は申し訳ございません。
本屋大賞翻訳小説部門堂々の1位を堂々と選出します。気に入ってしまったものは仕方がないわけです。
この作品、近年私が好みやすいエッセイ風といいますか、小説らしくな文体をしています。
本屋を営む店主の日常が綴られていくわけですから、こう考えたとかああ考えたとか、一見作者と主人公の境目が見えづらく、「物語」を愛する人が読めば、どこか混乱を残したまま、あるいは退屈させたまま読み終えてしまうかもしれません。
ただ、間違いなく良いところを言えば、わざとらしさがない。演技らしい演技がない。うまく書こうとして書けない手紙をくしゃくしゃにしてゴミ箱に放る描写もないし、頬を膨らまして地団太を踏む女の子も登場しない(たぶん)。
主人公の女性ヨンジュが開いたヒュナム洞書店と、書店に訪れる人々の群像劇というのがただただあらすじです。それほど分厚い本ではありませんが40章あり、各章が短編というより掌編の長さで連なっています。何かが起こる章もあれば何も起きない章もある、ただかすかに積み重なっていくものがあり、塗り重ねられる印象がじわじわと色濃くなっていく。
一人の青年が悩みを抱えながらも各章を経て、思い直したりいっそう思い悩んだりして、ある章の他愛のない場面で、とても大事なことを悟るのですが、その辺りで術中にはまったように私も何故か泣けてしまっておりました。最初は薄味にすら思えた日常の積み重ねでも、いつしかこれはすごいことをしてるんじゃないかと思ってしまった。不思議な小説だと思います。けれどこの説明できない感じをきっと多くの読書家の方々が味わって、本屋大賞なのかなとも思ったり。
未読の方にもきっとこの不思議な体験を味わっていただけるのではと。
長嶋有『僕たちの保存』
モストフェイバリット作家、長嶋有さんにまたしてもばりばりにやられた作品。
映画でもドラマでも、他にも音楽やゲームや動画においても、そのテーマに現代性のようなものは大事にせざるをえないのが昨今、ですよね。現代劇じゃないとという意味ではなく、例えば大河ドラマとか朝ドラに至っても、なぜ今これをやるのか、ときっと多くの企画が面接官みたいな人に最初に問われて、それを突破してきた背景が見えるというか。
ただどうしても、何年も思っておりますが、小説ってほんと、その点でどこよりも優れている。面接官の人が押し黙ってしまう現代性を悠々と持っている。全てがというわけではないです。そう思わせられた作品が多い。
『僕たちの保存』はタイトルで受ける印象、表紙で受ける印象の通り、レトロを愛する作品かというとそういうわけではありません。主人公は趣味で「あの頃」のゲームやらビデオやらを集めるコレクターですが、古き良き時代をいとおしむことを本質にはしていない。
車、新幹線、自転車とどの章も移動しているという場面設定の徹底ぶりが、この作品の小気味良い皮肉となり、鋭い批評となり、積みかさなる重みになります。友人の漫画家さんたちと石巻市の被災した高校の遺構を眺める場面の後、主人公が中学生の頃に所属していた「パソコン部」を懐かしむ会話があり、スマホでネット検索し、その中学校自体が廃校していることを知る、なんてあまりにもシニカルで象徴的な一連がありますが、「保存」と「保存されなさ」を書くことこの作品は何度も繰り返しています。
かといって、皮肉とか嫌味の味を読者に残すような作者さんではありません。ただ着眼点があり、省みる日常がある。作中に何度かある、スマホで景色やら人やらを撮る場面。おじさんらしく不格好で、些細な場面ではありますが、膨大な「保存されなさ」の中の小さな抗いのように散りばめられています。この作品に限らずなんですが、長嶋有さんから与えられるそういう気付きには、作中人物も、作品も、顔をあげれば当たり前にある私にとっての現実も、ちょっと愛おしく感じさせるような力があるのです。
バリー・ライガ『さよなら、シリアルキラー』<三部作>
非現実を楽しんでこそ、娯楽、読書、エンタメ。全く否定しません。上二つが刺さらない人にも刺さる人にも楽しめる、青春犯罪ミステリ小説です。
青春犯罪ミステリ小説の三部作(のちに前日譚の四巻目が発売されていることも合わせて)なんだかかなり『自由研究には向かない殺人』シリーズを想起してしまったのですが、こちらのほうが発刊は古いです。ただ私が読んだ順番が逆だったこともあり、プロットを重ねたり比較しながら読んでしまったところが多い。警察や大人の不甲斐なさ、親友や恋人の持つ役割や葛藤、そして主人公が越えてしまうボーダーライン、というふうに。
で、結論をいってしまうと、『自由研究~』のシリーズと比べてこの作品、終わり方にとっても納得のいくものがあったんですよね、個人的に。
服役している連続殺人鬼を父に持つ息子、主人公のジャズの住む田舎町で、ある殺人事件が起きます。幼少期から殺人の英才教育を受けてきた彼は、犯人の心理や現場の状況を読み解き、自らの能力を生かせることを証明する為にも事件を解決しようとします。
まぁとにかく主人公の特殊な背景と能力が突出していて、死体は怖がらないし犯人も怖がらないしその気になれば人心掌握もお手の物といったシリアルキラーの息子、という中々の強者なんですけど、やっぱり1巻の終盤近くから現れる父親の存在感が良い。シリアルキラー然としたシリアルキラーであり、ソシオパスらしいソシオパスであり、狂人だなんだと片づけられるような省略感がなく、彼なりのロジックはあるものの中身が見えないという、ともかく圧倒的エンタメ力を持った存在というか。ただこうなってくると、この親子関係に終始してしまうというか、勝手にやってくれという狭い物語になってしまいそうなんですが、不思議とそうはならないんですよね。社会性のようなものを問いかけるテーマがある。
いやでも、ともかく最後ですよ。いろいろとお決まりの展開にちょいちょいと思わせられたり、はらはらさせられますが、最後がいい。
現在は絶版中と思われますけども、創元推理文庫さんは定期的にカバーを新装版にするなどしつつ出版すべきです。絶対売れるんだから。
三冊は以上ですが、あと七冊のタイトルも合わせて、畏れ多くも2024年ベスト10を載せます。
ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』
長嶋有『僕たちの保存』
バリー・ライガ『さよなら、シリアルキラー』<三部作>
太田愛『未明の砦』
小川哲『君が手にするはずだった黄金について』
中島京子『ムーンライト・イン』
九段理江『東京都同情塔』
S・A・コスビー『頬に哀しみを刻め』
竹宮ゆゆこ『心臓の王国』
金子玲介『死んだ山田と教室』
有名な話題作が多いやないけって感じですかね。しかしなんだかこう、あらゆる有名な賞たちと同じ基準かはわかりようがないですが、やろうとしていることがわかって、それが遂行されているものに共鳴してしまうんですよね。うまくやり遂げていて拍手しちゃうというか。
とはいえ、確かに読んだ本は30冊でございますゆえ、もっと面白い本あったよと言われると、教えてくれよと飛びつきたいところではあります。まぁ積読もえぐい量があるわけですが。
2025年はもっと読む、と言ってしまうのは簡単ですが無理せず参ります。
実はもうバスケ関連でさらにフッ軽になって各地へ行く、というのはもう規定事項となっておりまして、頭の中は推しチームは何勝できるかだの、チームのコンディションだの各対戦のマッチアップだのでいっぱいとなっております。今年の読書合宿と銘打った旅すら、対戦成績やらスタッツやらを眺めていたら目的地に着いたみたいなことも珍しくなかった。恥ずかし。
そこ、です。2025年はちゃんとそこを切り替えて、移動中は読書をしたい。
これがもうちゃんとした目標です。読むときは読む。
来年の今頃もこうして読書アカウントっぽいことがしたい。
そう心に誓い、年を越えたいと思います。
そんな個人的な回でした。
2025年も、私なんぞはさておいて、ポラン堂古書店をよろしくお願いします。
ではまた。
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